第5章 藤の花の家紋の家 ~悲鳴嶼行冥~ 後編
それから数ヶ月が経ったある日、大きな鴉が一羽飛んで来た。
「コンヤ、トウチャク」
それだけを言うとまた、飛んで行ってしまった。
私は急いで炊き込み御飯の用意をしに、市場に向かった。
そうやって時折、鴉が連絡をくれて泊まって行ったり、何処かへ発つ途中なんだろう。顔だけを見せてすぐにまた大きな音を立てて居なくなったり……
ある時は、いつの間にか中庭に大きな石が置いてあったり……
私は行冥君が側には居なくても、いつも行冥君の存在を感じるようになっていた。
そんな事を考えながら、私は今か今かと、玄関で待っていた。
すると門の方から
「ごめんください」
声が聞こえた!
「行冥君っ!!!」
私はいつも通り走って彼に飛び付いた!
初めて会った時よりも、もっともっと大きくなった彼は、いつも私をしっかりと受け止めてくれる。
そしてぎゅっと抱き合うのに……
受け止めると、私をすぐに下に降ろした……
「?」
彼の後ろには
くすくすと笑う、可愛らしい女の子がいる!?