第5章 藤の花の家紋の家 ~悲鳴嶼行冥~ 後編
正一君は私達の間に入り、ぎゅっと手を繋いできた。
すると、行冥君が声をかけた。
「行くぞ、1、2、3!」
その掛け声で手を繋いだ私達は、正一君を高く上に上げた!
「わーーー!たっかーーい!もういっかーーーい!!!」
「そうか、行くぞ!」
食堂までの廊下を笑いながら歩く。
さっきの行冥君の言葉が頭に浮かぶ。
そうか……行冥君が私と正一君を仲良くしてくれたんだな……
部屋に入るとすぐに夕食を始めた。
明朝に発つと聞いて、先生と正一君の二人が駆け付けてくれたのだ。
「気をつけて行ってきてくれよ」
「たくさん、おにをやっつけてきてね」
二人からの言葉に
「はい。有難うございます」
と頭を下げる行冥君。
だけど私はご飯をよそう事しか出来なくて……
「たくさん、食べてね?」
「はい」
私が山盛りの炊き込み御飯を手渡すと、美味しそうに平らげていく。
「京子さんの炊き込み御飯は、絶品です」
「ありがとう。いつでも食べに来てね」
「はい」
「行冥君は、ここに来た時よりも二回り程、逞しくなったんじゃないかい?」
「以前の隊服が窮屈になりまして……先日、新しい物を届けて頂きました」
「ははっ!流石だなっ!柱も目の前だ!」
「精進致します」
先生も行冥君の成長を目を細めて見ている。ただ、二人の話があまり理解できなくて……
でも……どんな風になっても行冥君は行冥君だ。
私はそう思い、じっと話を聞いていた。