第4章 藤の花の家紋の家 ~悲鳴嶼行冥~ 中編 【R18】
私を抱き抱えたまま、玄関の戸や襖をどうやって開けるのかな
なんて思った私が馬鹿だった。
行冥君にとって私の重みなんて、本当に大した事がないみたいで……
軽々と片手に抱き変えて、戸も襖もスッと開けている……
鍛えてる人って、本当に凄い……
そんな事を思っていたら、あっさりと出かける前に用意しておいた布団の上に、そっと降ろされた。
そして
「京子さんは、私が怖くはないのですか?」
「…………なぜ?」
そんな事を聞くの……?
「目も見えず、身体もとんでもなく大きく、相手は鬼とはいえ殺生を繰り返している私の事を……」
「えっ!?」
思わず すっ頓狂な声を上げた私に、行冥君が
「……え?」
不思議そうに返事をした。
「だって、私……行冥君の事……ずっと、真面目で私や先生の言い付けをしっかり守る、優しくて愛らしい人だなぁ……って……」
「あ、愛らしいっ!?」
今度は、行冥君が頓狂な声を上げた。
「うん。だって私の方が年も上だし……可愛いなぁ、と思って……」
「……可愛いのは、貴女です」
「もう!見えないからって……」
今度は私が照れて、行冥君の事をパシパシと叩いてしまう。
「痛くも痒くもありませんよ」
「ふふ……そうだね……行冥君って……なんだか固くて 岩みたいに大きいよね」
「誉め言葉です」
「うん。私を優しく包んでくれる……
大きくて暖かな、砦みたいな感じ……」
私はそっと行冥君の手を握った。
「ゴツゴツしてるけど、優しい手だよ……」
「……私は力がかなり強く……その……貴女を大事に触れることが出来るのかが不安なのです」
行冥君がボソリと言った。