第4章 藤の花の家紋の家 ~悲鳴嶼行冥~ 中編 【R18】
「行冥君……」
「…………」
どうしよう……どうしても今はこの手を離したくない……
若い行冥君に誘わせる訳にも……
でも、でも……
「京子さん」
「ぎ、行冥君っ……あ、あのねっ!!!」
…………
行冥君の人差し指が私の口に縦にまっすぐ、そっと触れた。
そして
「私から言わせて下さい」
…………
「私は遊びや軽い気持ちで、女人をこの手に抱きたいなど思ったことはありません。
明るい将来の話も出来ません。
だけど……私は今どうしても……京子さん貴女の事を……」
私はそこまで聞いて行冥君に、抱きついた。
どこまでも真面目で、でも優しくて心の強い行冥君。
「貴方の部屋に……」
バッ!!!と、行冥君が私を抱き抱えた。
「お、重いでしょ……」
思わずそんな言葉が口をついた。
「この重みでは修行にもなりません」
そう言ってやっぱり見えていないはずなのに、暗闇の中をスタスタと歩いて行く。
私を抱き抱えながら……
私は、恥ずかしくて……
行冥君の首にそっと手を回し、顔を隠すようにしがみついた。
首筋からは 男らしい匂いがした……