第4章 藤の花の家紋の家 ~悲鳴嶼行冥~ 中編 【R18】
「あ、歩きましょう!歩けますか?」
「は、はい」
私の声に、照れ臭そうに答える行冥君。
だけど……
「夜道は心配なので」
そっと私の手を握ってくれた。
私はその手をぎゅっと握り返す。
大きな、大きな掌。
ゴツゴツとして、まるで岩の様……
「行冥君は大きな手ですね。私の手が小さく感じる……」
「京子さんは、私にとっては小さく愛らしい存在です」
「そんな事、初めて言われました。でも、行冥君みたいに身体の大きな人には、ほとんどの人が小さいですよ」
「いえ、皆が小さすぎるように感じて……
その……京子さんの小ささが私には丁度心地よくて……
あぁ、だけど一番はその明るいお人柄かな。私の心によく染み込んできます」
珍しく饒舌に話す行冥君……
だけど、それって……
まるで……
愛の告白みたいなんですけどっ!?
ドキドキと胸が早鐘を打つ。
こんな甘い時間、初めて……
もっと感じていたい……
そんな風に思っていたのに
足早に歩いていたからか、あっさりと屋敷に着いた。
だけど……
私はどうしても手を離す事が出来なくて……
行冥君の手を握ったまま、門を入った処で立ち止まった。
まだ若い行冥君に、これ以上甘えちゃいけない……
そう思って手をそっと離そうとしたら……
私が握っていただけじゃなかった……
私が離さなかっただけじゃなかった……
行冥君も私の手を……
力強く握りしめて離さないでいた……