第4章 藤の花の家紋の家 ~悲鳴嶼行冥~ 中編 【R18】
「私ね、子供が出来なくて離縁された事があるの」
「……」
「『3年子なしは、去れ』だって、3年目にきっちり返されちゃって」
「なんと……」
若い行冥君に思わず身の上話をしてしまったことを、後悔して謝ろうと思った瞬間
「愚弄な男が居たものだ。こんなに素晴らしい女性の京子さんを返すなんて」
また大きな数珠を持った手をあわせて言った。
「ふふ。ありがとう……耀哉君もね、同じような事を言ってくれたんだよ」
「お館様も……流石、お館様だ。何事も本質を見抜いていらっしゃる」
「ごめんね、こんな話……しちゃって……」
「何を謝る必要があるのです?私が貴女の話を聞きたいとせがんだのです」
「ありがとう……」
私のその言葉に
「貴女は笑顔で泣くのですか?」
行冥君が私の手をそっと取り、自身の方へ引き寄せた……
軽く引っ張ったつもりだろう。だけど力の強い彼に、私はドンッと身体を預けるような格好になってしまった。
「ご、ごめんなさいっ……」
焦って離れようとした。なのに
「今のは業とです」
行冥君が、ぎゅっと私を抱き締めてきた。
「え……」
「いつも太陽のように明るい貴女の笑顔に、そんな悲しみが隠されていたとは……
やはり私は、まだまだ修行が足らないようです」
「そんな……だって、行冥君は目が……」
見えないから私の事をそんな風に、いいように思ってくれているんだ……
そう声を出そうとしたら