第4章 藤の花の家紋の家 ~悲鳴嶼行冥~ 中編 【R18】
夜も少し遅かったので、私達は先生の家まで送って行った。
その帰り道
「ねぇ」
私は行冥君に声をかけた。
「何でしょうか」
「行冥君は、子供……好きなの?」
そう問いかけると、彼の足がピタリと止まった。
そして
「……少々、苦手です」
と呟いた。
「でも、正一君の相手するの、凄く上手だったよね?羨ましい。私は……」
声が詰まった。
「京子さん?」
やだ……涙が……
でも大丈夫。行冥君は目が見えないから、少し泣いても気付かないはず……
震えそうな声を必死で堪え
「あ、ごめんなさい……ちょっと、喉が……ふふ」
「……」
少しの沈黙
だけど沈黙を破ったのは、行冥君だった。
「私は……の次は何ですか?京子さん?」
酷く優しい声色だった。何時も自分に厳しい行冥君。だけど私にはいつも優しく声をかけてくれていた。
いつもよりもっと優しいその声に
「私は……子供が苦手なんです。だからかな?正一君とは何度会っても仲良くなれないの……」
「……何故、苦手なのです?」
攻めるような言い方じゃない。
私の事を心配して聞いてくれるような口振りに思わず本音を漏らした……