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せめて夢の中だけは ~【鬼滅の刃】短編集~

第4章 藤の花の家紋の家 ~悲鳴嶼行冥~ 中編 【R18】


話疲れたのか沢山食べたからか、正一君は突然、事切れたように眠りに落ちてしまった。

先生は嬉しそうに言った。

「こんなに楽しそうな正一は、初めて見たよありがとう行冥君」

「いえ、私も楽しかったです」

だけど

「正一は……私の妹夫婦の子でね……

 妹が次の子のお産で実家に帰って来て……
 お産が少し長引いてしまってね、正一も幼かったから家で預かっていたんだよ。

 その時に……」


先生が悔しそうに唇を噛み締めた。


先生のご両親 妹さんそして、出産に立ち会いたいと言ってくれたご主人。この時代にそんな男の人はなかなかいない。そして産婆さん……


皆が同時に鬼の犠牲になったのだ……


「仲の良い夫婦でね……死ぬときまで一緒とは……」


正一君を抱き締める手に力がこもる先生。
それを聞いて行冥君は、大きな数珠を持った手をあわせ


「私がもっと早く此処に来ていれば……力 及ばず申し訳なかった……」


そして正一君の頭に手をやり


「可哀想に……」


と呟き涙を流すと、行冥君は強い口調で言った。

「私は正一君には鬼狩りになどなって貰いたくはないのです。
 出来うるならばこの手で全ての鬼を滅殺し、鬼の居ない世をもたらしたいのです」


先生はその言葉を聞くと、大粒の涙をボロボロと溢し

「ありがとう、行冥君。君になら必ず出来ると私は信じているよ。
 ありがとう、本当に今夜は楽しい夕餉を過ごす事ができた!感謝しているよ」


うん、うん。私もそう思う

いつかこの人なら、鬼の居ない世をもたらしてくれるはずだ!

一段と大きくなった、彼の背中を見て私も心からそう思った。





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