第4章 藤の花の家紋の家 ~悲鳴嶼行冥~ 中編 【R18】
「いらっしゃい、大きくなったね正一君」
「……」
「ははっ、最近 人見知りが酷くてねぇ。すまないね、京子さん」
「いいえー大丈夫ですよ。さ、早く皆で食べましょう」
部屋に案内すると、大きな行冥君が座っている。
一瞬、動きの止まる正一君。
まぁ、あの大きさには誰でも驚くよね。
なのに……正一君は、行冥君に駆け寄って行き
「おにがりさま!ぼくも、おおきくなったら、おにがりさまになりたいんです!」
と、大きな声で言った。
「そうか……では、沢山食べて大きくならなければいけないな」
行冥君は、正一君に向き直り頭を撫でている。
目が見えていないなんて、嘘みたい。
行冥君は常に正一君の方を向き、相づちを打ちながらずっと話を聞いている。
正一君は幼いのに、確り心酔しきっている様子で、先生も
「俺のところに来て初めてだよ、あんなに沢山話し、沢山食べるのも」
なんて言って、嬉しそうに眺めている。
一見、慈悲深そうに話す行冥君。
だけど……
私には……
少し無理をしているように見えた。