第3章 藤の花の家紋の家 ~悲鳴嶼行冥~ 前編
背の高い彼は、座っていてもやはり高い……
私は膝立ちで、ゆっくりと彼の口に粥を運んだ。
そしてそれを飲み込むと、ひめじま君は真っ赤な顔をして
「旨いです」
一言そう言うと、用意した粥を全部綺麗に平らげてくれた。
なんか、大きな動物に餌付けしてるみたいだったな……
そんな事を考えていると、昨日の先生が顔を出してくれた。
「おはよう、勝手に上がらせてもらったよ……
ええっ!?朝食を食べているのかい!?」
さすがの先生もびっくりしている。
「おはようございます。昨日はご面倒お掛け致しまた。ありがとうございました」
布団の上に座り直し、頭を下げている。
「いやいやいや、ええーーー?ちょっと傷をみせてくれる?そんな、1日2日で起き上がれる怪我じゃなかったよ!?」
「ですよねっ!?朝は中庭で座禅を組んでいたんですよっ!?」
「本当かいっ!?ちょっと横になって、傷を診せてくれないかい?」
「はい」
私は少し離れたところに座り直し、先生の診察の様子を見ていると、
「信じられないが、かなり良くなっているようだ……
だが、まだまだ安静にしていなければならないよ」
「そうですか……やはり、まだまだ修業が足らないのですね」
ん?今の会話でなんでそうなるの!?
「君の階級はなんだい?」
するとひめじま君は「階級を示せ」と呟くと
ぐっと拳に力を入れ、階級の文字を浮かび上がらせた。
「乙(きのと)!?」
「?」
先生が大きな声を上げた。