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せめて夢の中だけは ~【鬼滅の刃】短編集~

第3章 藤の花の家紋の家 ~悲鳴嶼行冥~ 前編


お粥と昨日豆ご飯にしようと思って用意していた豆を柔らかく炊いて、青年のいる部屋に運んだ。

「失礼致します」

襖を開けると 青年は 寝ていた身体を起こそうとした。

私は 駆け寄ると

「ゆっくりで大丈夫ですよ」

そっと背中に手を添えた。


「……かたじけない」


その言葉に思わず、くすっと笑ってしまう。


「あ、ごめんなさい。なんだか、その言葉ばかり聞いているようで……私達が鬼狩り様のお世話をするのは当然のことだから、気にしないで下さいね」

「いえ。感謝しております」


至って真面目に答える青年……


「あ!お名前は?お名前は何て言うの?」

「悲鳴嶼行冥と申します」


「ひめじま……君?きれいな名前ですね」


「いえ……そのような……」


「あ!ごめんなさい!お食事どうぞ!自分で食べられますか?お手伝いしましょうか!?」


私はご飯を乗せたお盆を、彼の膝の上に置いた。


「褥の上で食事など……横に置いて下さい……」

「……いいんですよ?怪我人は黙って甘えても」


「……え?」

びっくりした顔のひめじま君。

「寝ててもいいぐらいです。私が食べさせてあげますから」

「いえ、そのような事は……」

「じゃあ座って、口を開けて下さい。手も大きな怪我があるんですよ?傷口に障りますから」


「いや……」


あーーーもうっ!


「口を開けるっ!」


大きな声を出すと、とうとう黙ってひめじま君が口を開けた。





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