第3章 藤の花の家紋の家 ~悲鳴嶼行冥~ 前編
だけど……
昨日は、かなりの失血だった。
立ち眩みだろう。
私はまた彼を支えた。
と、思った瞬間、彼は体勢を整えてまた一人で立つ。
「もうっ!こんな時くらい甘えて下さい!」
そう言ってまた、私は彼の脇腹に回り込んだ。
今度はしっかりと支えることが出来た。
でも、顔が真っ赤なままで……
ま、まさか……
「もしかして、昨夜の事……覚えてる?」
「…………」
わーーー無言の返事だ!!!
「ごめんねっ!!!全く飲み込めないようだったから、咄嗟にっっっ!!!」
「いえ……ありがとうございました……」
「でも……気付いてたの……?」
「身体が全く思うように動かなくて……意識だけはぼんやりと……」
「そっか……って、だからまだ寝てなくちゃダメでしょ!?人間なんだから、そんなに簡単には治らないんだからね」
「……」
あ、黙っちゃった。
言い過ぎたかな?
それより……
「はい。部屋に到着しましたよ。ちゃんと寝てて下さいね」
「かたじけない」
「ふふ、朝御飯用意してきますね。食べれそう?」
私の問いに、今度は少し照れたような顔をして
「お願い致します」
と、頭を下げてくれた。
「すぐに用意しますね」
私は、急いで台所に向かった。