第3章 藤の花の家紋の家 ~悲鳴嶼行冥~ 前編
朝、目が覚めると……何故か私は布団の上にいた。
掛け布団も肩までしっかりと、かかっている。
あれ?
でも、この部屋……
勢いよくガバッ!!!と起きると、私は声の聞こえる中庭に足を運んだ。
そこには
座禅を組んでいる 痩せた大きな背中が見えた。
「起きて大丈夫なのっ!?」
びっくりして、大きな声を出してしまう。
だけど青年はゆっくりと此方へ振り返る。
「おはようございます。大丈夫です」
そう言って、頭を下げた。
う、嘘でしょ!?
私は走って青年に近づいて行き
「何、言ってるの!?あんな大怪我をして!ダメよ!布団に戻って!!!」
「いえ……もう大丈夫です」
「馬鹿な事を言わないの!」
また声が大きくなってしまった……
「あ、ご免なさい……」
「いえ」
そう言った青年の顔を見ると……
「あれ?目が……」
「はい。全盲です」
「え?」
全盲?全盲って、全く目が見えないんだよね?
え?それで鬼狩り?
いや、そもそも全盲の人がなんで初めて訪れた家の中庭を把握してるの?
私が頭の中で混乱を極めていると、
「音の反響と、鴉が教えてくれるので、色々とわかるのです」
あぁ……肩に乗った大きな鴉が……
でも、この青年の肩に乗ると、全く大きさを感じない。
だけどその鴉も、また
「ネテイロ!オヤカタサマ ノ オオセダ!!!」
と、肩から下げた上着を引っ張っている。
「ほら、部屋に戻りますよ」
私は近づいて彼の手を取ろうとした。
すると彼は、真っ赤になって……
「大丈夫です……」
と、言って立ち上がった。