第7章 愛する人【愈史郎】
俺の血を呑ませればもしかして、京子は生き永らえたのだろうか……
俺と共に鬼になっていたのだろうか……
いや、俺の血でそんなことが出来るとは思えない。
それに、京子には人として女性として
人生を全うして欲しかったのだ。
それは、人として人生を全うすることの出来なかった珠世様の為にも。
珠世様も京子も俺だけの物にならなくてもいいんだ。
ただ俺は二人の幸せな顔を、側で
見たかったんだ……
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京子が死んで一年も経たずに戦争は終わった。
その戦争は、いわゆる『第二次世界大戦』で
日本は大敗した。
炭治郎達は 皆、無事に帰ってきた。
もちろん家族も全員、揃っている。
戦後暫くの間は、皆が同じ場所に住んでいたのだが、それぞれが町に出て行った。
時折、炭治郎達が遊びに来た。
子供たちは連れて来ないでくれと言った。
年をとらない俺の姿をもう
誰にも見せたくなかったからだ。
時代は変わって行く
昭和から平成、そして令和
俺が鬼だと知る者も 京子の事を覚えていた者も、誰も
いなくなっていた ――――――――