第7章 愛する人【愈史郎】
「大きくなったら、お父しゃんとけっこんするのー」
にこーっと笑うその笑顔は、炭治郎と禰豆子譲りだ。
彼奴達 家族と過ごすようになって、京子は語彙力もだが、表情がかなり豊かになっていた。
「それは無理な話だな」
俺はキッパリとそう告げる。
後ろからアオイや禰豆子達に、非難轟々で罵声を浴びせられるが、本物ではないにしろ親子で婚姻は結べないし、まして俺は鬼なんだからな。だが
「俺は、いつかお前が嫁に行く日を楽しみにしている」
そう言って京子の頭を撫でてやると、周りの声も収まった。
そうだ。俺はお前が嫁に行く日を楽しみにしていたんだ。
白無垢、裾引きの黒振袖、いや、今は西洋風のドレスなんて言う物もある。
きっとお前なら、どれも似合うしどれも着こなすだろう。
だってお前は……
珠世様のお血筋なのだからな
以前、炭治郎に言われたんだ。
「愈史郎さんの目はどこまで見えるんですか?」と問われ、その時に“記憶の遺伝”の話を聞いた。
その日の夜に俺は覗き込んだんだ。京子の“記憶の遺伝”を視る為に
そして俺の“目”に映り込んだ物は
泣き崩れる青年
その青年が幼い頃に「姉様」と呼んでいたのが……
紛れもない人間だった頃の“珠世様”だったのだ。
泣き崩れていたのは、珠世様のご家族が鬼に惨殺された時の記憶で……
まさか、その鬼が珠世様ご自身だったとは、弟君も思いもよらなかっただろう。
だが後にその青年は、結婚をし子を授かり……脈々とその血が引き継がれ、京子まで辿り着いたのだ……