第7章 愛する人【愈史郎】
俺は京子の働く工場近くまで 直ぐに来た。
音がかなり近付いて来てはいるものの、どうやら皆が防空壕へ逃げ込む準備をしているようだ。
警報音が大きく鳴り響く中、
慌ただしくも、皆が冷静に行動しようとしている。
俺はその集団の中に、必死で京子の姿を探す。
無事さえ確認出来れば、もし危なければ俺が……
なんて思って急いで来てはみたが、どうやら無事に避難出来そうだな。
そう胸を撫で降ろしたした瞬間だった。
先程まで聴こえていた音とは反対側から、物凄い勢いで爆撃機がやって来る音が聴こえてきた……
いや、違う!!!
物凄い勢いで、爆弾を落としながら近付いている!!!
そう気付いた瞬間、俺の方に走ってくる女の子の姿が見えた!!!
京子だ!
何をしている!早く防空壕に逃げ込め!!!
そう叫んだのだが、口が布で覆われているせいと轟音が響いて聴こえていない!
俺は直ぐに京子の思考に入り込んだ!
だけど俺の思考を送る前に流れ込んで来たのは、京子の思考で
『お父さん!危ない!!!』
俺は鬼だから心配ないんだ!だが、京子はそんなことなど知らない!
『防空壕へ行け!!!』
それだけを送るのに
京子の思考に届いているハズなのに
どうして、真っ黒な姿で建物の陰に隠れている俺に気付くんだ!!!
京子!!!