第7章 愛する人【愈史郎】
「昨日、近くまで戦闘機が来てたね……」
「あぁ。大きな音が響いていたな」
夕方、一仕事終えたカナヲが食糧を取りに来た。その時に少し話しをしていると、至極当然の質問をしてきた。
「京子ちゃんの事、心配?」
「……」
そんなの当たり前だ。京子だけじゃない。お前たち皆が心配なのだ。だから、こうやって傍に置いているだろう。
だが、そんなことは口に出さない。
「もうすぐアイツ達も就業時刻だな」
「そうだね、今日もお腹ペコペコで帰ってくるよ」
「あぁ……!!!」
「!!!」
はっ、とした俺の気配を敏感に感じ取ったカナヲが、俺を見てビクッと大きく身体を反応させた。
「来る……」
「ゆし、」
「爆撃機だ!!!京子のいる場所だ!!!」
「愈史郎さんっ!!!」
俺の言葉もカナヲの言葉も、互いに最後までは聞こえなかった……
俺が瞬時に飛び出したからだ。
何故だ、何故、ここまで聴こえなかった!
こんなに京子の近くに来るまで!!!
あぁ……アイツは……京子は、懐に御守りを付けていたから……建物の中で聞き取るのが、遅れてしまったのか!!!
あの音は……軍事工場を狙って来ている!!!
方角的に、京子のいる……
陽が傾いて来てはいるものの、まだ赤い夕焼けが頭から真っ黒な布を被っていても感じる程だ。
だけど!!!