第7章 愛する人【愈史郎】
疲れた顔をして帰って来る事が多くなった。
周りの大人が次々と居なくなる。
子供にはやはり、体力的にも精神的にもキツイのだろう……
夜に甘い紅茶を淹れてやり、暖かな布団で共に眠りにつく。
だけど……この生活はいつまで続くのだろうか……
京子もだが、周りの子供達も皆、成長してきている。
それと共に、親達ももちろん年をとっていく。
皺や白髪……見た目で解る物もある。
なのに俺は
年をとらない。
京子が寝息をたて始めると、俺は起き上がり机の引き出しを開けた。
その奥に小物入れがある。
珠世様から、頂いた……大切な物が入ってある。
小瓶だ……
中身は鬼を人間に戻す薬だ。
どこまで成功しているのか、はっきり言ってわからない。
もし、すぐに戻るなら、俺はとうに鬼籍に入っている。
それとも、飲んだ時点から、年をとって行くのだろうか……
色々と考えたり、悩んだりしていたのだが……
今は まだ飲む必要もないだろう と考えて、いつまでも机の奥に仕舞っていたのだ。
俺の頭の中には、京子と共に年をとり、この人生をやり直す事も考えたんだ。
珠世様も、どう言う気持ちで渡したのかわからない。
俺を一人置いていく事を慮っての事なのは解るのだが……
だが人間に戻り、今さら陽の下に出たとして……
俺は結論の出ない考えに、大きな息を吐きだし、薬の入った小瓶を元の場所に仕舞った。