第7章 愛する人【愈史郎】
敗戦の色がかなり濃厚になった。
なのにこの国は、まだまだ人を道具のように使っていく……
「学徒動員!?」
三人の母親達と夜、話し合っていた。
「そうなの……うちの上の子達もなんだけど……」
アオイのところは、早くから子供がいたからな……
だけど、そんなまだまだ子供な彼奴らを……
俺が苦虫を噛み潰したような顔をしていると
「京子ちゃんもなのよ……」
カナヲがぼそりと言った。
「京子はまだほんのガキだぞ?おまけに女じゃないか!」
思わず大きな声が出た。
「うん……うちの子達もなんだけど……女の子は、軍事工場で働くらしいの……」
「そんなもの行く必要なんてないだろう!?」
思わず机をバンッ!!!と大きく叩くと、4つの湯呑みが、がたがたと揺れた……
「そんな訳には行かないのよ……」
禰豆子が悔しそうに唇を噛みながら言うと、
「悪い鬼の居ない世になったのにね……人間の方がよほどたちが悪い……」
カナヲの言った言葉に、全員が黙った。
コイツらは命懸けで、鬼の居ない世にしたんだ。珠世様だって命を賭けて!
なのに……今度は人間同士で命を奪って行くのか……