第7章 愛する人【愈史郎】
「それよりも、ずっと気になっていたんです」
炭治郎が言った。
俺は黙ったまま炭治郎の顔を見た。
「京子ちゃんの顔……少し……似ていませんか?珠世さんに……なぁ禰豆子?」
「う……ん……?ごめんなさい。あまりはっきりとは覚えていなくて……」
あれだけ世話になったくせに……まぁ、鬼だった頃を覚えていないのは、良いことなんだろうが……
「珠世様はあんなに がさつじゃないからな。比べようがないだろう」
俺の一言にアオイが
「それは躾をキチンと受けてないからよ!かなり綺麗な顔してるわよ、京子ちゃんは!」
胸を張って答えるアオイに、善逸がぼそっと
「そんなところまで伊之助に似てるんだね」
そう言うと、ぐふっぐふっと不気味に笑いだした。
「あぁんっ!?俺の顔に何か文句でもあんのかぁっ!?」
「ないよぉー!ただ綺麗な顔だって言っただけだろお?」
「ざけんじゃねぇっっ!」
……また、いつもの騒ぎが始まり、炭治郎とアオイが止めに入っている。
そして
「きっと何かの縁があるのよ。皆で育ててあげましょう。問題が起きたときは皆で考えればいいから、ね?」
カナヲが炭治郎から手渡された赤子を抱きながら、言ってきた。
縁、か……
「まぁ、今さら追い出せないだろう……」
俺だけなら人を育てるなんてのは無理だ。だけど、皆がいるのなら大丈夫だ。
妙な確信を持った俺は、甘いな、なんて思いながらもコイツらと居る事を選んだのだ。
きっとそんな事が出来るのは、俺の存在を知っているコイツらが居る今だけだ、と思ったからだろう……