第7章 愛する人【愈史郎】
「二人は離れる必要があるのか?」
最初に口を開いたのは炭治郎だった。
「当然だ。いつまでも俺が一緒なのは良くないだろう」
俺が憮然とした顔で答えた。
「どうして?」
「どうしてだと?当然だろう。俺は『鬼』だ」
「うーん……問題はそこじゃない気がするなぁ」
炭治郎が腕を組んで言った。
「なんで鬼に育ててもらっちゃ、駄目なんだ?俺は山の王に育ててもらったぞ?」
伊之助が胸を張って言った。
……いや、それ問題大有りだっただろうが……
それについては、流石に誰も返事をしない。
だけど伊之助はそんな事は意に返さない。奴の気は、すでに目の前の饅頭に移っていたから。
「私達もずっと考えていたのよ……だって京子ちゃん、愈史郎さんの事、本当のお父さんだと信じて疑わないの」
禰豆子の言葉に女達が頷く。
「今は特別な状況だ。だけどいつか、この戦争は終わる。京子も成長する。
なのに俺は、日に当たる事も年を老う事もないんだ。それがどういう意味か、お前らに解らないはずはないだろう」
一気に捲し立てるように言った。
何家族も同居するような事態すら、おかしい事なんだ。
「解るよ愈史郎さん」
善逸がポツリと言った。
コイツは普段は奇天烈な事ばかり叫ぶが、意外と常識的なところがあるからな。
そんな事を思った矢先
「心配なんでしょ?京子ちゃんの事が」
禰豆子にピタリとくっついたまま、ニヤニヤと笑いながら善逸が言った。
「は?」