第7章 愛する人【愈史郎】
「おい、俺は奥の部屋にいるからな」
子供達に飯を食わせている禰豆子とアオイに声をかける。
「もう夜明けだね……」
白んで来た空を見て禰豆子が言った。
その言葉に続けてアオイが
「私達も食べ終わったら、少し寝ようか」
子供達は口を動かしながら、既に船を漕いでいる。
もちろん京子もだ。
「布団はそこに入ってある。勝手にやれよ」
「ありがとう愈史郎さん」
にこーっと禰豆子が笑うと、禰豆子の子供達も笑った。
俺はそれには返事をせずに、一番奥の、日の当たらない部屋に向かった。
バタンと戸を閉めると、ベッドの上にゴロリと転がった。
そして大きな溜め息をついた。
俺は珠世様のおかげで、少量の血で充分に事足りる。
最近はその血すらも、あまり欲しなくなってきていた。
それと俺は禰豆子を真似て、出来るだけ眠るようにしている。それも良かったんだろう。
だけど……
あれは効いたな……
カナヲが出産の時に出た……血の匂い……
出て来た胎盤の匂いと感触……
それを少しでも欲しいと思った俺は……やはり……
間違いなく“鬼”なのだ、と
思い知らされた気がした。