第7章 愛する人【愈史郎】
長くこの世に存在すると、色々な事に遭遇する。
まさか……
この俺が……
赤ん坊を取り上げることになろうとは……
「あーーーっ!!!やっぱり、お産が始まってたんだねーーー!!!」
やっと到着した禰豆子達が大声を上げた……
「おめでとー!きゃー女の子だよー」
「おめでとー!」
皆が騒ぎだした。
そしてアオイが
「愈史郎さん、ありがとうございました。
迎えに来ないから、きっとお産が始まったんじゃないか、って言ってたんですよ」
「そうか……おっと……」
どんっと、足元に何かがぶつかった弾みで少しぐらついた。
「おとしゃん」
「京子ちゃんね、ちゃんと頑張って歩いたんだよ、ね?えらかったね?」
そんなの当然だろう?何を言って……
ドンっ!とアオイが一発腹に入れてきた。
もちろん痛みはないんだが……
その行為に少し苛立つも……
アオイの目が“その目は止めろ”と訴えかけている。
…………
俺は心の中で盛大に溜め息を吐くと
「よくがんばった。ほら、そこの子供達と一緒に風呂に入って身体を休めろ」
俺のその言葉に、キラキラと瞳を輝かせる京子。
「あんた達が入ってる間に、なんか食べる物用意しておくからねー!ちゃんと洗ってやってよー!」
アオイの言葉に子供達、皆が元気に返事をした。
もう、夜明けは近かった……