第2章 睡魔-SUIMA-
後ずさりをしようにも、腕が頭の上で拘束されており、ベッドに仰向けになっているため、それは敵わない。
「ちょ、ちょっとローさん、一旦落ち着きましょう!」
「だから落ち着いてねェだろ」
「あ、朝っぱらから何下ネタ言ってんのッ…!」
「何言ってんだ、お互い裸だっつーのに」
「私昨日パジャマ着てたよね!?」
「ああ、脱がした」
でしょうねッ…!!
人生で寝ている間にパジャマを脱いだ事は一度もない。
もちろん下着もだ。
「な、なんで怒ってるのよ…」
私がそう問うと、ローの迫力のあるオーラが弱まっていくのを感じた。
まるで、悪いことをして先生や母親に怒られている子供のような、そんな表情をしている。
そんなローも可愛い。
…なんて言ってる場合じゃない。
早く腕を解いてほしい。
「早く腕解いて?このままじゃローに触れないよ」
そう言うと、顔を伏せたまま、腕に巻かれていたネクタイをローが解いた。
ネクタイで縛られてたのね。
なんかAVみたい。
…そんなAVは見たことないけど。
やっと解かれた腕を手でさすると、ほんの少しだけ赤くなっていた。
その手をローに掴まれたと思ったら、そこに優しくローの唇が触れた。
「…悪かった」
「何が?」
「…赤くなっちまった」
「そりゃ縛られてましたからね」
『当然でしょ』と言うと、私の手を握ったまま、ローが顔を伏せる。
「ロー?どしたの?」
「…情けねェ」
「な、情けねェ…?」
「久々にゆきに会えたのに、途中で寝ちまって…」
「ああ、確かに中途半端にされて少しとまどったけど、私もローも疲れてたしね」
「…なんで叩き起こさなかったんだ?」
「叩き起すわけないでしょ、眠たかったんだから」
「…お前はそこまで眠たくなかっただろう?」
「…まあ、そうね」
確かにあそこで止められるという経験はなかなか味わえるものではない。
焦らしプレイの方が、後で必ず快感が与えられる事が決まっているため、幾分かマシではあるだろう。
それが“焦らしプレイ“というやつだ。
…って、何言ってんだ私。
「…怒ってねェのか?」
「なんで私が怒らなきゃいけないのよ、っていうかさっきローの方が怒ってなかった?」
「…自分が情けねェのと、中途半端にされたのに何にも気にせず寝てるお前を見たら、頭に血が上った」