第2章 睡魔-SUIMA-
腕を何かで拘束されている。
目の前に誰かが立っているが、よく見えない。
明るくもなく暗くもない。
体は、少し寒いような気がした。
“あなたは誰なの?“と問おうとするが、口がうまく動かない。
信じられない状況に置かれているはずなのに、不思議と恐さはなかった。
むしろ安心している。
だがずっとこのままの状況で居るわけにはいかない。
拘束された腕を必死に動かしていたら、目の前の人物が私に近付いてきた。
恐いはずなのに、恐くない。
そう思っていたら、唇に何かが触れた。
暖かい。
そう思った瞬間に、口の中に何かが侵入してきた。
“これで声が出る“と思ったら、急に辺りが明るくなった。
明るくなったはずなのに、目の前が急に真っ暗になった。
「起きたか」
「…ん?ロー…?」
聞き覚えのある声が聞こえてきたと同時に、ぼやけていた視界がハッキリとしてくる。
目の前には大好きなローのドアップ。
どうやら自分は夢を見ていたらしい。
「夢でも見てたのか?」
「ああ、うん。なんか腕が拘束されてる夢…」
そう言いながら体を動かそうと思ったら、腕が全く動かない。
それに、自分が何も身につけていない事に気付いた。
「ちょ、何これ…!?」
「まさか夢の中でも同じことが起きてたとはな」
「な、なんで私腕縛られてるの?」
「夢の中で誰か居たか?」
え、人の話聞いてる?ロー。
「いや、居たんだけど顔とか性別とかは分からなかった」
「まさか俺以外じゃねェだろうな」
「誰かは分からなかった…っていうか、早くこれ解いてよ!」
「ヤダ」
“ヤダ“って、子供か。
…少し可愛いなんて思ってしまった。
「昨日はよくもやってくれたな」
「え?何のこと?」
「中途半端に終わらせやがって…おかげで朝から大変だった」
ローも裸ではあるが、下は布団で隠れている。
…はずなのに、とある箇所だけ何かが主張していた。
「し、知らないよそんなの…!ローが眠たかっただけでしょ!」
「あァ?」
いつものじゃれ合いのつもりで言っただけなのに、ローからの返答で相当機嫌が悪いことが分かった。
…いやちょっと待ってよ。
勝手に寝たのはローの方だよね!?
いや、すぐに私も寝たけどさ!
迫力のあるオーラを身にまとったローが、ゆっくりと私に近づいてくる。