第2章 睡魔-SUIMA-
その動きは、いつものように快感のツボを刺激するようなものではなく、ただ動いているだけの動作だった。
「ちょ、ちょっとロー…指止めて?」
「…何でだ?」
「眠いんでしょ?今日はもう寝よう?」
今日はお互いの仕事終わりで、ローが私の家に来てくれた。
二人でご飯を食べ、お風呂に入り、早々にベッドへと移動した。
確かにこの条件が揃っていれば、体が求めるものは睡眠しかない。
だが、ローの指の動きは止まらなかった。
しかし、その動きはたどたどしく、さっきまで鳴っていた水音も段々としなくなってきていた。
むしろ、異物が入っているかのような感覚だ。
「ねえロー、もういいから寝よ?」
「…久々に会えたんだぞ」
「それは分かるけど、ロー疲れてるでしょ?」
「…それはお前も同じだろ」
こんな状態で、最後までシようと言うのか。
「ね?ロー」
腕を伸ばしてローの体を抱き締めると、指の動きが止まった。
私の中で。
背中をポンポンと叩くと、ローの体がゆっくりと私の上に降りてきた。
下着の中のローの手をゆっくりとどけて、なんとかローを横にならせた。
ローの頭を抱えるように抱き締めると、寝息が静かに聞こえ始めた。
「おやすみ、ロー」
ローのおでこにキスをすると、ローが抱き締め返してきた。
起きたのかと思い顔を覗いたが、もうすっかり夢の中へと行ってしまったようだ。
気持ち良さそうに寝るローの寝顔に、思わず顔が綻ぶ。
目の下の隈が酷くて、目つきの悪いロー。
そんなローが、大人しく私の腕の中ですやすやと寝ている。
きっと今感じている気持ちは“優越感“というやつだろう。
実は付き合った当初、ローは一緒に寝てくれなかったのだ。
誰かと一緒に寝たことが一度もないらしく、そのような場面になった際も今まで起きていたと言うのだ。
実際には“眠れない“という表現が正しいだろう。
最初はそれに少し寂しい想いもしたが、いつの間にか今日のように眠るようになっていた。
(いつからなんだろう…)
起きたらローに聞いてみよう。
そんな事を考えていたら、自分の瞼も急に重くなってきた。
寝るようにはなったが、ローの寝顔が見られる日はそうそう無い。
いつも私より早く起きるし、私よりも後に寝るからだ。