第9章 すれ違う心
「も、もう入った?」
「っ、まだ、少しだけだ」
彼も何だか息が荒い。
「えっ!?」
もう十分痛い。少しって、どこまでを少しと言うの?
「もっと力を抜いてしっかりと、俺を受け入れろ」
「んぅ.........っ、」
彼は私の口を再び塞いで、ねっとりと舌を絡ませた。
「っ、.........はっ、..んんっ.........」
はっきり言って、もう痛くてやめて欲しかったけど、彼の絡みつく舌と私の頭を撫でる手、そして重なり合う素肌の感触が心地良くて.......
自然と力が抜けた時、彼のものを身体の奥に感じた。
「っぅ................!」
「.........っ、セナ」
痛いのは私なのに、動きを止めた彼の顔もなぜか苦しそうに歪んだ。
「ゆっくり動く。辛かったら言え」
もう、何が痛くないのかは分からないから、とにかく無言で頷いた。
彼がゆっくりと腰を動かすと、やはり痛くて...
「いっ、........」
その痛みに耐えようと彼の首に腕を回すと、彼はそれに応えるように優しく抱き締め返してくれた。
だから、彼の機嫌が直ったんだと、錯覚してしまった。
彼に抱き締められ、彼の熱を体内中に感じながら、時折耳をかすめる彼の声に気が昂った私は、
「...っ、社長の事が、......好きです」
ずっと伝えたかった言葉を、伝えた。
ドクンっと、身体の中にある彼の質量が増した気がした。
「.........っ」
彼は固まったように、揺らいだ目で私を見たけど、次の瞬間私の腕を剥がしてベッドに押し付けた。
「仕置きのつもりだったが、そんな戯言を言えるとは優しくしすぎたみたいだな」
「えっ?」
「手加減してやるのはここまでだ、そんな言葉、二度と吐けない様にしてやる」
冷たく言い放ち、彼は腰の動きを速めた。
「やっ!」
痛みは次第に薄れて行ったけど、激しく突かれるその行為に、先ほどまでの優しさは微塵もなく、せめて抱き締めてほしいと手を伸ばしても、簡単に掴まれて、ベッドに沈められた。
彼の熱が体内に放たれるのを感じた時にはもう意識も虚ろで身体に力が入らなくて.....
無言で脱ぎ捨てた服を拾い、それを着て部屋を出ていく彼の姿をベッドの上から涙目で見送った。