第9章 すれ違う心
「いっ.......た.........」
ゴシゴシと、朝から血の付いたシーツを洗いながら、まだじんじんと鈍い熱の残る下腹部に手を当てた。
「まだ、お腹が熱い.............」
服を着ている今は見えないけど、さっきシャワーを浴びようと脱いで鏡を見たら、胸の辺りに無数の赤黒い痕がついていて、昨夜、時折チクッと感じたものの正体がこれだと分かった。
「私.....................」
ついに、社長に抱かれてしまった。
後悔はしてない。
でも.............
「体を重ねれば、一つになれると思ったのに...」
告白も、彼の怒りを買っただけで、簡単に消されてしまった。
彼が私を抱いたのは、約束を破ったお仕置きで、それ以上でも以下でもない。
..................それでも、約束を破っていなければ、もう少しは優しくしてくれたの?
考えたところで、お腹に残る熱は何も教えてくれない。
初体験は、甘さも擽ったさもなく、ただ切なさが残った。
『気をつけなさいね。あの男は最低よ。抱かれたら最後、紙屑のように捨てられるだけよ』
あの日、麗美さんに言われた言葉だけがまるで正しい答えの様に、何度も頭にこだました。
彼に抱かれた私はもう、紙屑のように捨てられるのを待つのみとなった。