第9章 すれ違う心
撮影を終え、部屋に戻りシャワー浴びてスマホを見ると、ちょうどケイティから連絡が入っていた。
〔お仕事お疲れ様。写真の件だけど、今回はお金を払って解決する事にしたわ。スタッフのほとんどは、映画の番宣にもなるから週刊誌に掲載した方が良いって言ったんだけと、社長が払うと押し通したわよ。今度お礼を言いなさいね。じゃあお休み〕
それは、あの写真に対してお金を払うと決定したと言う報告で、社長にあの写真を見られてしまったと言うことだ。
社長は、あの写真を見て何か思ったんだろうか。
何やってるんだ位には呆れているのかも。
どのみち今日は部屋着に着替えてしまったし夜も遅いから、ケイティに返信を送って終わる事にした。
〔お疲れ様です。今回は迷惑をかけてしまい本当にごめんなさい。
社長にもお礼とお詫びを言いたいので、社長が社内にいる日時を教えて下さい。これから気をつけます。おやすみなさい。〕
「はぁ、ご飯作るの......面倒臭いな」
髪を乾かしキッチンに立つけど食欲はない。
でも、もうすぐ水着撮影があるし、そこに向けてコンディションを整えて行きたいし、今は体調管理は重要だ。
「よし、作ろう!」
気持ちを入れ替えて冷蔵庫を開けた時、インターホンが鳴った。
「..................こんな時間に誰だろ?」
エントランスからの音ではなく、ドアベルの音だから、押した人が限られてくる。
「はーい」
9割がたケイティだから、ケイティだと思ってドアを開けた。
「..........あ」
違う、ケイティじゃない。
社長だ。
彼の機嫌が悪いのは、私を睨み見るその表情と、なんとも言えない彼の放つピリピリとした空気感で分かる。
「っ、........あの、...っあ」
一瞬、苦しそうに目を少し細め、彼は後ろ手でドアを閉めてきつく私を抱きしめた。