第8章 心の隙間
「..............セナ、聞いてる?」
「えっ? 」
義元さんの声で我に帰ると、そこは待ち合わせたカフェで.......確か、私たちはこれからどうするかを話し合っていたはず。
「俺と一緒に過ごすのは嫌?」
義元さんが寂しげに微笑んだ。
「そ、そんな事ありません。私、まだこっちに住み始めて2ヶ月程だから、全然分からなくて」
しまった!突然の社長の言動に惑わされて.......
「ごめんなさい。」
私、失礼な態度を取ってる。
「大丈夫。落ち着いて。じゃあ今日は、俺の行きたい所に行ってもいいかな?」
「はい、もちろんです」
「よし、じゃあ行こう」
自然に手を引かれ、そのまま店を後にした。
義元さんが私を連れて行ってくれたのは美術館。
「今、日本の古美術展やってて見たかったんだ」
と言っていた。
はっきり言って、綺麗だなぁ、すごいなぁ、位の感想で、ちっともその価値感は分からなかったけど、一つ一つに張り付く様に展示品を見て行く義元さんを見ているだけで、何かに熱中する気持ちがすごく分かって、自然と楽しめた。
義元さんは終始優しくて、ちゃんと話も聞いてくれて、義元さんと付き合う人は幸せだなぁなんて思う反面、ここにもし、社長と来てたらどんな会話をするんだろうと、何をしてても義元さんに社長を重ねて見てしまっていた。
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「........結局、俺の好きな事に付き合わせてごめんね」
予約をしてくれたと言う、何だかすごい個室のお店に連れて来てもらって、義元さんは座るなり人懐っこい笑顔で謝ってきた。