第8章 心の隙間
「............. 出かけるのか?」
おお、今日も話しかけてくれた。
「はい。お友達に誘われて」
本当の意味でのデートではないし、お友達だから.......嘘はついてないよね?
「その服........」
社長が私の着ている服に気がついた。
「あ、はい。社長に頂いた服です。凄く気に入ってるのでたくさん着てます。本当にありがとうございます」
社長が選んでくれたと言う、ライトブルーの膝上丈のワンピース。可愛くて上品さもあって、本当に気に入ってる。
「セナ........」
「はい?」
名前を呼ばれると、髪留めを取られた。
「あっ、........」
ぱらりと、アップしていた髪が解かれた。
「社長........?」
「貴様は下ろしてる方が似合う。今日はそれで行け」
私の顔を覗き込み、ちゅっと、触れるだけのキスをすると、私の手に髪留めを渡し社長は先に降りて行った。
「...........っ、いつも突然なのずるいよ」
急に優しくされたから、何だか彼に嘘をついてしまった気がして、後ろめたさが残った。