第1章 ネットニュースの人
突如現れた新星に世間は一気に魅了され、ワイドショーを騒がせた。
モデルとしても、俳優としても、圧倒的な存在感を見せつけた彼は、あっという間にスターの座へと上り詰めた。
けれども二年ほど前、社長業と学業に専念すると言って、またもやスルリと芸能界から身を引いた。
しかし、世間は彼を忘れる事はなく、今はゴシップ誌や情報番組、ネットニュースで日々特集され、誰からも注目される存在のままだ。
とにかく、織田信長という人はとても有名人で、私の憧れの人だ。
そんな人物が今私の目の前に、しかも私のお見舞いに来てくれたとは到底考え難く、現実ではないのかもしれないとの思いが、私の頭をよぎった。
「..............夢?」
自分の頬をつねりながら呟くと、
「現実だが、夢だと思うのなら、その折れた足首を蹴ってやろうか?」
イタズラな視線が私のギプスをした足首に向けられた。
「え?やっ、それは遠慮しておきます。...........でも、織田信長........さんが何で私のお見舞いに?って、あっ、もしかしてビックリドッキリ番組?」
友達か家族が私を不憫に思って、ビックリドッキリ番組に投稿してくれて、それで?
「...........なるほど、次から次へとつまらん事で頭の回る奴だ。だがそれも違う。貴様とは、仕事の話に来た。あと半分は見舞いだ」
呆れた様に少しため息を吐くと、私の横に腰掛けた。
「し、仕事?」
「そうだ」
間近で見ると更に綺麗な顔についつい見惚れてしまう。
「私まだ、高校生ですよ?」
「かまわん。貴様にはこのオーディションを受けて貰いたい」
そう言って彼は、一冊の雑誌を私に手渡した。