第8章 心の隙間
「はい」
「わぁ、ありがとうございます。ん〜良い匂い。生き返る〜」
いつの間にか、私がラテの砂糖なしが好きって覚えてくれてた義元さんは本当に優しい。
社長は、こー言うこと何度言っても絶対覚えてくれなさそう。それどころか鬱陶しいって言われそうだな。
「お弁当、食べようか」
「はい。いただきます」
パチンと手を合わせて、お弁当の蓋を取った。
「わぁ、美味しそう。今日は中華だ」
よくテレビで、ロケ弁に飽きたとか言うタレントさんや俳優さんがいるけど、ロケ弁はとっても美味しい。
スタッフさんが気を利かせて毎日色々な所から取ってくれているから、カフェご飯っぽい時もあれば、ナシゴレン弁当などアジアンな時もあったりと、本当に楽しみにしている。
「セナは、本当に美味しそうに食べるね」
空腹で豪快に春巻きにかぶりつく私に、義元さんは優しく目を細める。
「美味しいもの食べてる時って、凄く幸せだから。友達にもよく言われてました。ご飯に喜びすぎって」
「クスッ、確かに。セナはいつも喜びすぎだね。モデルさんなのに、糖質制限とかしてないんだ?」
「うーん、基本的にはしないですね。食べた分動けば良いと思ってて、寮にトレーニングジムがあって、好きなだけ体は動かせるんです」
「織田プロだっけ?いいな、俺もそんなプライベートジム欲しいな」
「家康に言えば、多分お友達も利用できると思いますよ。でも、義元さんが急にうちのジムで鍛えてたら、女性スタッフ達が大騒ぎしそうですけど。ふふっ」
ケイティが一番興奮しそう。
「............セナの恋人としては、行っちゃだめなの?」
「えっ?」
急に、上品な顔が近づいて、囁くように言われたからドキっとしてエビチリが箸から落ちた。