第7章 キャンパスライフ
「ありがとうございます。あの、もうお昼食べました?」
「まだだよ」
「良かったぁ。あの、もし良かったらこれ、一緒に食べませんか?」
コーヒーとサンドの入った袋を義元さんに見せた。
「嬉しいけど、俺がいると思って買ってきてくれたの?」
「あ、はいっ。多分ここに来たら会えるんじゃないかと思って」
「........俺がいなかったら、どうするつもりだったの?」
「その時は、また一人叫びながら二人分を食べるつもりだったから、いいんです。ふふっ」
本当に、そうするつもりだった。
「.............クスッ、君は本当に面白いね。ありがとう、いただくよ」
義元さんは、コーヒーとラップサンドを袋から選んだ。
「俺に会いに来たって事は、映画の話を聞いたんだね?」
コーヒーを一口飲んで、義元さんが私に問いかけた。
「はい。今朝、マネージャーが、慌てて私の部屋に来て........ふふっ、凄く慌ててました」
本当に、あの時のケイティは凄い迫力だったなぁ。
「君は?」
「えっ?」
「君は、慌てなかったの?」
「私は.........んー、まだ夢みたいで、実感が湧かないって言うか、むしろ、義元さんが歌舞伎界のプリンスって呼ばれてる凄い人って事の方がビックリで.....あっ、でも、お礼を言いたくて今日は来ました。推薦して頂いて、ありがとうございます」
「本当は、他の女優さんに決まってたんだけど、急遽スケジュールの関係でダメになってね、セナにぴったりだと思ったから推薦しただけだよ。」
義元さんは、本当に綺麗に笑う。
口元のホクロが彼の妖艶さを引き立てていて、少し見つめられるだけで、ドキドキしてしまう。
「そ、そんな風に言ってもらえて嬉しいです。演技経験ゼロですけど、義元さんの足を引っ張らないように頑張ります。宜しくお願いします」
気恥ずかしさもあって、立ち上がって義元さんに頭を下げた。
「そんなに緊張しなくても大丈夫。俺に出来る事なら何でも協力するから言って」
「はい!」
その日は、義元さんと連絡先を交換して事務所へと戻った。