第7章 キャンパスライフ
「は?アンタ知らないの?歌舞伎の名門、駿河屋の十一代目、龍王丸よ!歌舞伎界のプリンスよ龍様よ!?」
ケイティはスマホを取り出して、画面を触り出した。
「歌舞伎?見た事もないし、龍王丸って人も知らないよ」
「この子よ!」
頭を傾げる私に、ケイティがスマホの画面を見せてきた。
「............あ、この人!」
「やっぱり知り合いなのね!」
「でも....龍王丸って名前じゃなくて......」
「今川義元でしょ?」
「あ、そう、その名前」
「その今川義元が歌舞伎役者の龍王丸なのよ!アンタどうやって知り合ったの?」
前のめりにケイティが聞いてくるから、この間の大学での事を話した。
「.......そうか、家康ちゃんとあなた同じ大学って事忘れてたわ。家康ちゃんは子役になる前、お父さんに無理矢理歌舞伎の世界に入れられて、幼少期は龍王丸と一緒に歌舞伎の稽古を受けてたから知り合いなのよ」
「そうなんだ」
(何か家康って、人生が深そうだな)
「私、全然オーディションに受からないって話を義元さんにたくさんしちゃったから、それで可哀想に思って紹介してくれたのかも...」
あの日、義元さんはずっと真剣に私の話を聞いてくれた。
「あら、それは違うと思うわ。アンタの話を聞いて可哀想に思ったのなら別に女子生徒のちょい役とかでも良かったはずなのに、わざわざ自分の相手役に指名するなんて、アンタの事を気に入ったからよ」
「気に入ったって、1時間にも満たないくらいの会話しかしてないよ」
むしろ、大声で叫びながら大口でサンドをかじるおかしな女と言うイメージを持たれた気がする。
「その映画って、ホラーとかじゃない?」
猟奇的な役なのかもしれない。