第7章 キャンパスライフ
「あ、俺そろそろ時間だ」
家康が時計を見て立ち上がった。
「仕事?」
義元さんが聞くと、
「うん。ドラマの撮影。俺はもう行くけど義元はまだいてやってよ」
「分かった。じゃあまたね家康」
義元さんは軽く手を振った。
「じゃあセナ、一つぐらいオーディション受かるようにあんたも頑張んなよ」
「う、うん。がんばる。家康ありがとう」
家康は行ってしまい、義元さんと二人ベンチの上に残されてしまった。
「君が一人でご飯食べてる所を家康が見て、声かけようって言ったんだよ」
「えっ、そうなんですか?」
気にかけてくれたって事かな。案外優しい人なのかな。
「事務所の後輩が一人、ベンチの上で何か叫びながらサンドイッチを豪快に食べてたから気になったんじゃない?」
クスクスと上品に笑いながら義元さんは言った。
「あぁ〜あの叫び声、聞かれてました?」
社長との関係が分からず苛々してつい叫んでしまったあの声を.......
「うん。しっかりと聞こえたよ。何なの一体って言ってた。オーディションなかなか受からないんだって?」
「あ、......はい」
聞かれてはのは恥ずかしいけど、イライラの原因はオーディションに受からないからだと思われたみたいで助かった。
「最近はどんなオーディション受けたの?」
「えっと、.........」
その後も、義元さんは午後の講義が始まるギリギリの時間まで私の受けたオーディションの話を聞いてくれ、「頑張ってね」と言いながら、優しく励ましてくれた。
久しぶりに、ケイティ以外の男の人の優しさに触れた私は、心が軽く暖かくなって寮へと戻った。