第7章 キャンパスライフ
好きじゃないのに、なんでキスやセックスができるのか不思議だったけど、私だって、彼のことをそんなに知っているわけではない。
ただ、綺麗なフォームで走るスプリンターで、今は私の所属するプロダクションの社長だって事くらいで、家にも行ったことはないし、連絡先も知らない。今だって、あの日で関係が終わったのか続いているのかすら分からない。
彼を好きだと思うこの気持ちはとても複雑だ。
「あぁー!何なの、一体!」
解決できないことにモヤモヤして、サンドイッチの包装をバリバリと勢いよく破って、ガブリと大きな口でサンドにかぶりついた。
「........でっかい口」
急に、呆れとも感心とも取れる声が聞こえてきた。
.......ん?
サンドにかぶりつきながら上を見上げると、そこには二人のイケメン。
慌ててサンドを噛みちぎってごくんと飲み込んだ。
「あっ......と、徳川さん........?」
とイケメンもう一人。
「家康でいいよ。その呼ばれ方嫌なんだ」
「え、じゃあ家康さん.....?どうしてここに?」
「呼び捨てでいい。俺ここの学生だから。隣、いい?」
「あ、はい、どうぞ」
「ありがとう」と言って、二人のイケメンは私の横に座った。
「すごい偶然ですね。私もここの学生なんです」
「はぁ、敬語もやめなよ。あんたがここの学生だってのは、今ここにいるあんたを見て分かるよ」
「あ、そうですよね、じゃなくてそうだよね」
家康(図々しくもう呼び捨て)に会うのは二回目だ。引っ越してきた当日、ダサイと言われて以来。
正直、良い印象はない。
「俺にも紹介してよ家康」
家康の隣に座る、グレイヘアの毛先を一つに束ねた上品で綺麗なイケメンが、家康に話しかけた。
「.......別に、うちの事務所に新しく入った子だよ」
「そうなんだ。初めまして、俺は今川義元」
「あ、初めまして。春海セナです」
声まで優しそう。
「君は、女優志望なの?」
「え?あの.......はい。でもまだ入ったばかりでなんの仕事も決まってなくて、と言うか決まらなくて、今川さんは俳優さんなんですか?」
とても上品で綺麗な顔立ちをしているし、この人も芸能人なんだよね.....?