第6章 助言
「こら、麗美!今のあんた、最高にブサイクでやな女よ」
その声に振り返ると一番会いたくない奴。
信長が捨てた女たちの慰め役、ケイティ。
「煩いわね。分かってるわよ.........」
.........でも、悔しいじゃない。
彼が私に本気じゃないって分かってたし、私もプライドが邪魔して彼に本気だとは気づかれないようにしてきた。
それでも、今までの女より長く続いていたし、このまま本当の恋人同士になれる日が来るんだと思ってたのに、急に関係は終わりだと告げられて、しかもあんな.....何も知りませんって顔した小娘に簡単に取られて.............
それなのにまだ手を出してないですって?キスだけ?
そもそも、キスは嫌いだとか言って、行為を盛り上げる程度にしかしてくれなかったくせに!
笑わせないでよ。あんなに来るもの拒まずだった癖に、本命にはキスだけなんて、そんなに分かりやすく大切に扱ってるなんて.............本当に、ひどい男。
「これできれいさっぱり別れて忘れてあげるのよ。少し位、意地悪したってバチは当たらないでしょ?」
イジワルは言ったけど、嘘はついていないわ。
今までの彼は、本当にそうだったから.....けれど、私は違うと思いたかったのに、私も例に漏れず彼のサイン通りに捨てられた。
「麗美、アンタはいい女よ。ただ、信長ちゃんはあんたの運命の相手じゃなかっただけ」
「煩いわね。オネエの世話焼きなんかいらないわ」
じゃああの子は、運命の相手だとでも言いたいわけ?
「まぁ、そう言わず、今夜はとことん付き合ってあげる。飲みに行きましょ」
「いやよ。あんたとスクープなんかされたらたまったもんじゃないわ!」
「あら、アンタの経歴に箔がついていいじゃない。じゃあ今夜はここで待ってるわね。奢るわ」
ケイティは名刺の裏にお店の名前と場所を書いて、私に渡した。
「ちょっと、行くなんて言ってないじゃない!行かないわよ!」
「だったら一人で飲むからいいわ。気が向いたら来なさい」
ぽんぽんっと、私の肩を優しく叩いてケイティはあの子の方へ歩いて行った。
結局その夜、私は彼の指定したお店へと行き、散々毒を吐いて慰めてもらい、彼に振られてから初めて泣いた。