第6章 助言
「おはようございます」
ゆっくりと彼女に歩み寄り声を掛けた。
「あ、おはようございます。お疲れ様です。.......えっと.....」
私の顔を見て、戸惑いを隠せない様子の彼女。
まだ彼女からは、あの日会ったままの真っ白な雰囲気が伺える。
でも、綺麗になった。
「信長には、もう抱かれたの?」
彼女に近づいてこそっと耳打ちをすると、
「まっ、まさか!何言って、そんな事してません!」
顔を真っ赤にさせて、ブルブルと大きく頭を左右に振った。
嘘はつけるタイプではなさそうだ。
「.................でも、キスはしたでしょ?」
「っ....................」
彼女の頭から、ボンっと、火が噴いたかのように、彼女はこれ以上ないくらいに赤くなり、口を噤んだ。
ほらね。嘘はつけない。
「気をつけなさいね、あの男は最低よ。抱かれたら最後、紙屑のように捨てられるだけよ」
「わ、分かってます」
メイクが取れないように、泣かないように必死の彼女。
もっと、虐めてやりたくなった。
「大丈夫よ。いざと言う時傷つかないように、信長が女に飽きるタイミングをいくつか教えておいてあげる。私もこれを知ってたからきれいに別れられたのよ。あのね..........」
震える彼女の耳元に、自分が望んでも手に入れられなかった様々な事を伝えた。
私の話を聞き終え、青白い顔でフラフラと去っていく彼女を見ながら、こんな最悪な自分に、胸がむかむかしながら現場へ戻るべく足を動かした。