第5章 都会の空気
「っ..........えっ?」
余りに突然に、経験したことの無い事をされて、理解するのに時間がかかった。
まるで、母犬が子犬にするみたいに、彼は私の目を片目づつ、ペロっと舐めてキスをした。
「っ............あの..........」
「うるさい。静かにしろ」
心配そうに私の両眼を見ていた目は、いつの間にか熱を孕んでいて、見つめられると顔が一気に熱くなった。
「貴様はすぐ赤くなる」
真っ赤であろう私の頬を指で数回スリスリすると、社長はふっと笑い、少しずつ私との距離を縮め、唇を重ねた。
「ん、..................」
三度目のキスもやっぱり甘い。
優しく舌先で唇をなぞり軽く食まれると、自然と口が開いて彼の舌が侵入してくる。
「ん.........っは.....ぅんん」
彼に誘われるまま舌を絡ませ合うけど、緊張して彼の腕を握る手に力が入る。
「セナ、そんなに力むな、息をしろ」
「っ、無理、わかんな........ん」
静かな部屋の中、自分の吐息とそれに混じって漏れる声。そして絡み合う唾液の音が羞恥心を揺さぶる。
「ん......んんっ.............っ、ん」
息をしろと言ったくせに、唇が全然離れなくて更に深く呼吸が奪われていくと、前回同様に、体の力がふわふわと抜けてぞわっとした感覚が走った。
「セナ」
何でだろう。彼が私の名前を呼ぶとお腹の下の方がズクンと疼く。
「ふっ、充血した目以上に真っ赤だな」
「っ、だって、恥ずかしい........」
「これ以上の事をするのに、それではもたんぞ」
「えっ?.......あの、.............っん」
唇が重なると、少しずつ体が倒されてベッドに沈んだ。