第5章 都会の空気
ー次の朝ー
「きゃあ、セナ!どうしたのその眼っ!」
真っ赤に充血した私の目を見てケイティが叫んだ。
「ごめんなさい。朝起きたら赤くなってて........その少し前から痒みはあったから....」
何だか、少し前にも同じようなことがあった気がするけど、今回は寝不足ではない。
「謝らなくていいわ、先に病院に寄って撮影に向かうわよ。この時間だとまだ開いてないから、近くの救急外来に行きましょう。」
「はい」
雑誌の撮影は早朝集合が多く、今朝も5:30に雑誌社へ集合と早かった為、ケイティは近くの救急外来へと連れて行ってくれた。
私の実家は神奈川県にある。
でも、世間のみんなが思う神奈川県ってきっと、横浜なんだと思う。私の育った街は、山奥ののんびりとした田舎町で、神奈川県の人ですらここを他県だと思っている人が少なくない位に県境に位置している。
郵便番号で手紙が届くからいいけど、よく隣の県名が書かれて届く事もあった。
小学校も中学校も各学年一クラスか二クラスしかなく、みんな知り合いで、兄弟のように育った。
小学校の運動会なんかは、午前が学校競技で、午後は町内運動会となる。
何が言いたいかと言うと、とにかくのんびりとした田舎で、のびのびと育ったという事。
だから、東京の空気にまだ慣れることができなくて、健康そのものだった自分はアレルギーとかには無縁だと思ってたけど、都会の空気には弱かった。
検査の結果はハウスダストや排ガスによるアレルギー症状で、今回は結膜炎を引き起こしたらしい。
撮影の方は、モデルさん達の強い味方、目の赤みを和らげてくれる目薬が今回は功を奏した為、撮影に支障は出なかったけど、これ以上赤く腫らした場合は、他のモデルさんに変更になると言われ、少なからずへこんでしまった。
「じゃあ、私はまだ他に行くところがあるから。今日はしっかり目を休めて。明日は仕事は入ってないから学業以外で目を酷使しないでちょうだい」
撮影を終え、ケイティに会社の前で降ろしてもらい、居住者専用エレベーターに乗った。