第5章 都会の空気
だがしかし、問題はこの先だ。
いかんせん、私は処女。そして彼は百戦錬磨の遊び人。
処女の妄想は日々止まらない。
だって、キスから先は未知の世界。
ベッドで行為が始まったら服はいつ脱ぐのかとか
、そもそも裸を見せられるのかとか、やっぱり初めては痛いのだろうかとか、どうでもいい考えばかりが頭に浮かんでしまう。
あの夜のキスにしたって....................
「まずはキスを教えてやる」
「んっ............」
優しく舌でなぞるように重なった唇はとても甘くて、彼は何度も角度を変え、優しく唇を重ねては啄んだ。
「はっ.................ぅん!んっ」
聞いたことのない自分の声が自然と口から漏れて、恥ずかしくて仕方がない。
でもそれよりも息苦しい。
とても息継ぎなしで我慢できそうにない。
だけどそれを伝えるのは恥ずかしくて、僅かに口が離れた瞬間に息を吸おうと口を開いた途端、にゅるっと彼の舌が割り込んで来て舌先が触れ合った。
「ふっ、............ん、ん」
息継ぎ作戦は失敗に終わった。
くちゅ、くちゅ、と水音が聞こえてくると、更に呼吸を奪われた。私の口の中で彼の舌が蠢き、私の舌を巻き取って吸い上げられると、ゾワっと体が震えて力が抜けて行くのが分かった。
「しゃ.........っふ、まっ..........くるし」
彼のスーツの襟を掴んでグイグイと引っ張り息苦しさを伝えると、唇が離れた。
「ぷはっ、はぁ、はぁ、ごめんなさい、その、息が苦しくて......社長は、苦しくないんですか」
唇を離した時、絡め合った唾液が糸のように伸びてたまらなく顔に熱が集中したけど、とにかくこの息苦しさを何とかしたい。
「ふっ、貴様はいちいち言う事が可愛い」
「へっ?......んっ」
私の問いには答えてくれず、まだ息が整わないうちにまた唇が重なった。