第5章 都会の空気
社長って、本当に多忙らしい。
社長と付き合うと専属契約をしてどうなるかと思ったけど、あの日を境に、彼とは一度も会えていない。
かく言う私も中々に多忙な日々を送っている。
まだまだ全然登場できるページ数はないけど、月刊紙であるBbの撮影はそれでも忙しく、それ以外にも、演技、ヴォーカル、モデル、ダンスレッスンを受け、合間を縫って、CMや映画、ドラマのオーディションを受ける日々。そして大学の課題もある。寝て起きる意外、フル稼働だ。
彼に会えなくなったのは、現実にだけではなくゴシップの世界でもで、あんなに毎日騒がれていた彼のプライベートは、お天気キャスターの紅林麗美と破局という報道を最後に、パッタリとなくなった。
どうやら、私との専属契約はちゃんと守ってくれているらしい。
好きではないけど俺の女になれと言われ、そして追い討ちをかけるように、ケイティに婦人科に連れて行かれ、ピルを飲むようにと言われた。
それを承諾した直後は、怖くて悲しくて塞ぎ込んだりもしたけど、自分の身体を自分で守るのは当たり前の事。はっきりと言ってもらってよかったと思えた。
元来私は重苦しい事が得意ではないらしく、愛はなくても付き合ってくれると言われたんだから、思いっきり楽しもうと、考えをシフトした。
だってよく考えたら、あの織田信長だよ?
抱かれたい男No. 1だよ?
高校生の頃、ネットニュースで彼のゴシップ記事を見るたび、「いいなぁ、私も遊びでもいいから付き合ってほしぃ〜」と、よく友達に言っていた。
それが現実に叶ったんだから、私は喜ぶべきなんだ。
遊びでもいい。もう、それでいい。好きだから、僅かな時間でも彼を独り占めできるなら、こんな幸せな事はない。だって、可能性が0か100かと問われたら、私は迷わず100を取る。そして、それを思い出にこれからも頑張っていける。
恋は盲目。その通りだ。
好きになったら突き進むのみ。
そう思ったら、とても単純に彼との関係を楽しもうと思った。