第39章 夫婦の絆 〜信長様誕生日sp〜
「………信長っ!」
まだ心の準備ができてないのに、信長に会ってしまった!
「何を驚いてる?俺に会いに来たんだろう?」
ドアを押さえていた手は私の手を取りエレベーターから廊下へと連れ出してくれる。
優しい笑顔と口調に胸がツキンと痛み、少しでも不安に思った自分がとても情けなくなって来た。
「信長…私……」
正直に話そうと思った時、
「セナっ!?」
「えっ?」
「やっぱりセナっ!兄さんに会いに来たのっ?」
部屋から出てきたのは信長の妹でモデルの市。
「いっ、市っ!?」
「久しぶりっ、元気だった?」
「うん。元気」
ハグとチークキスがナチュラルにされてその場がパッと明るくなった。
信長の相手は市だったのだと、早くも疑惑が解明された。
そりゃあパリコレモデルの市と信長が並べば絵になるのも、信長が親密そうに背中に手を添えていたのも、優しい目をしていたのも、妹ならばとても納得だ。
つまり私は、信長の妹に嫉妬をしてはるばるこんな所まで来てしまったって事だ。
「市も元気…そうじゃないね……?」
ハグが解かれ市の顔を見ると、何だか顔色が悪い。
「詳しくは部屋で話す」
「あ、うん」
信長に促され、私たちは市が出て来た部屋へと入った。
・・・・・・
「えっ!妊娠っ!?」
部屋に入るなり爆弾発言が市の口から飛び出した。
「ふふっ、もう3ヶ月ですって」
そう言ってお腹を撫でる市はもう母の顔になっている。
(そっかあの写真…、本当に産婦人科に行った写真だったんだ……)
「…それで市は、産むつもりなんだ?」
売れっ子ショーモデルとして、市は世界中を飛び回っているけど…
「もちろんよ」
彼女からは何の迷いもない返事が返って来た。
「相手は?聞いてもいい?」
どこかの国の王子様に、石油王、大企業の御曹司にスポーツ選手に映画俳優と、各界の大物達が市を狙っているのは有名だけど、市はその誰にも本気にはならずどんな相手なら彼女を落とせるのかとよく話題になっている。
そんな市にこれほどの覚悟をさせる相手って一体……
「もうすぐ会えるわ」
信長に似た綺麗な顔が静かな笑みを浮かべて目を瞑った。