第38章 夢が見せる奇跡 〜年末年始特別編〜
「っ、何だよ…仕方ないだろ?」
バツの悪そうな顔…ああ、そんな顔も信長にそっくりだ。
ううん、顔だけじゃない。
背丈も、手足が長いとこも、低くてよく響く声も、なんていいとこ取りなのかしら……!
「…って、あれ?なんか透けてきてない?」
彼に信長の面影を重ねて見つめていると、彼の後ろが何だか透けて見え出した。
「ああ、そろそろ母さんが目を覚ますんだ」
「え、じゃあ……」
これでお別れ?
「とにかくそう言うわけだから、俺の名前の事、母さん頼んだよ」
「分かったけど…、待って、まだ私聞きたいことが沢山あるのに…」
あなたは幸せ?
そんなに信長にそっくりで、彼女はいるの?
すごくモテるんでしょ?
女の子を泣かしたりしてない?
って、ああ私、女の子の話題ばかりだ……
「ふっ、母さん安心して。俺は二人の子供に生まれて来たいと思ったから二人を選んだんだ。あとは、これから母さんが俺を育てながら知ってく事でしょ?」
「そ、そうだよね…、でもまだ話していたかったのに…」
信長にそっくりな我が子。こんな少しの時間なのに、あなたをとても愛しいと感じる。
「これから好きなだけ話せるよ、まぁ話せるようになるのに少し時はかかるけどね」
パチンッと、ウインク。
彼は、パパよりも陽気に育つみたい。
「ふふ、その日を楽しみにあなたを育てるわ。名前のことも教えてくれてありがとう。もう一度あなたのお父さんと二人でしっかり考えるから…」
「良かった。くれぐれも頼んだよ。じゃあ母さんまた後で」
「うん、またすぐ会おうね」
“See you soon “
そう言って彼は姿を消し、私は目を開けた……
「……あ、起きちゃったか……」
少し残念な気持ちに駆られながら視線を窓へと向ける。
窓の外はまだ暗くて雪がチラついている。
さっきまで騒がしかった新年の喧騒はもうすっかりなくなっていた。
「どうした?」
私が起きるたびに目を覚ます信長が私に話しかける。
「起こしてごめんね」
「構わん、だが…嬉しそうだな、いい夢でも見たか?」
「うん。あのね、驚かずに聞いて欲しいんだけど…」
私は信長に、今見た夢の話をした。