第38章 夢が見せる奇跡 〜年末年始特別編〜
「いつもありがとう。今年はきっと初めての事ばかりで色々迷惑をかけると思うけど、宜しくお願いします」
「貴様の事は迷惑などではない、むしろ喜びだ。少しでも異変を感じたらすぐに言え」
「うん。大好きだよ」
「知ってる」
横たわった私の唇に、信長は口づけを落とす。
「ん……」
何度か啄むと舌が私の口をこじ開け差し込まれる。
信長の手が私の頬に添えられ口づけが深くなっていく。
「んっ……」
お腹の膨らみが気になるようになってから夫婦の営みをストップした私たちは、それでも口づけで互いの想いを伝え合う。
「っ……ん、ぁ、待って信長、これ以上は…」
口だけでなく、頬や首筋などを信長が口づけ出したのを私はやんわりと手で止めた。
「っ、悪い…行き過ぎたな……」
「ううん、私ももっとしてたかったんだけど…その…前にも言ったけど気持ちよくなっちゃうとお腹がきゅうって締め付けられて張っちゃうから、赤ちゃんが苦しい気がして……ごめんね」
口づけだけで十分だと言って、信長は何も私に要求をしないから、ずっと我慢をさせている事に申し訳なさを感じてしまう。
「謝る必要はない。俺の我慢など貴様の体への負担に比べれば大した事ない。なにせ子の命を守っているのだからな…」
「うん、そしてその私とお腹の子を信長が守ってくれてる。とても幸せだよ」
「っ、あまり可愛いことを言うな。……もう眠れ、そうでなくともなかなか寝られるのだろう?」
「うーん、お腹が大きくて好きな体勢で眠れないからよく目は覚めるかな…でもそんなのもあと少しだし、生まれちゃうときっと今日のこの日を懐かしく思うのかも…」
「そうだな…」
中々熟睡できない私に気遣って、ここ最近は信長の腕枕も封印されていて、その代わりに手を繋いで眠る日々を過ごしている。
「おやすみなさい」
「おやすみ」
それでも、この手の温もりが私を眠りへといつも誘ってくれる。
二人で眠る日々はきっともうすぐ三人へと変わる。
(赤ちゃん、どうしたら出てきてくれるのかな?恥ずかしがってるのかな?中々出てきたくない理由があるのならママに教えてほしいなぁ…)
なんて事を考えながらお腹を撫でて眠りに落ちた……。