第37章 最終章〜あなたが与えてくれたもの〜
「俺と、貴様と、生まれてくる子どもと、また新たなストーリーが書けそうだが、その前に貴様はその物語を育むための長期休暇が必要だな」
「うん。そうだね」
新たなストーリーはまだ始まったばかり。
既にタイトルは決めてしまったけど、これはまだ信長には秘密。
「セナ、会場だ」
「えっ、もう?……うーーやっぱり緊張してきたー」
リムジンは報道カメラマンやファンの人々で溢れる中をゆっくりと進み、レッドカーペットの前に停車した。
よく報道番組で見るようなシーンを車の中から体験する日が来るなんて思ってもなかった。
「大丈夫だ。手を出せ」
車のドアが開いて先に降りた信長が私に手を差し伸べ、私はその手をしっかりと掴んで握り返す。
「信長…」
「何だ?」
「大好きだよ」
「知ってる」
信長は笑って私の手の甲に口づける。
あなたと初めて出会った日も、あなたは私の手の甲にキスをした。
嬉しい気持ちも悲しい気持ちも、あの日からあなたが私に教えてくれたことは数えきれない。
あなたが私に教えてくれた様々なことと、これから与えてくれる沢山の幸せなことは、きっと書ききれないほどのストーリーとなって、私をしあわせに包んでくれる。
「あ、赤ちゃんの名前考えないとねって、気が早いか」
「吉法師でいいだろう」
「えっ、何で?かなり古風じゃない?」
「何となくだが頭に浮かんだ」
「え〜!しかも男の子限定?」
「そんな気がするだけだ」
「なんでーーーッ」
あなたとこれから紡いでいく新しいストーリーのタイトルは、
【あなたが与えてくれたもの】
あなたに教えてもらい、与えられ、愛される日々。
そんな日常がストーリーとなり完成するのは、まだ少し先のこと。
終