第37章 最終章〜あなたが与えてくれたもの〜
「話は以上だ。明日の会見までは何を聞かれても会見で話すと伝えるよう社内にも徹底させろ」
「かしこまりました」
秀吉さんは神妙な面持ちで頷き、
「ちょっと、話はまだ終わってないわ!」
ケイティは話を終わらせようとする信長に待ったをかけた。
「まだ何かあるのか?」
チッと、舌打ちが聞こえてきそうな声と顔で信長はケイティを睨んだ。
「あるわよ!」
ケイティは負けじとそう言って、私たちに近づいて来た。
(何だろう?もう話せることは全て話したはずだけど…)
ドキドキとケイティの行動に目を見張っていると、ケイティは私と信長それぞれの手取った。
「「?」」
「おめでとう」
「「………っ」」
「急すぎて、ほんっとーーーに急すぎて慌てたけど、まだこの言葉を言ってなかったわね。信長ちゃん、セナ、結婚おめでとう。これからマスコミや仕事先への挨拶回りとかで大変になるとは思うけど、二人が一緒になるなんて、こんなに嬉しいことはないわ」
「ケイティ…」
(やだ、そんな優しい顔でそんな嬉しい事言われたら…)
「おい、セナを泣かすな」
「っ、信長違うの、嬉しくて……ケイティ、ありがとう」
いつも、どんな時でもずっとケイティは私たちのことを応援してくれた。
1番嬉しいおめでとうの言葉だ。
「お礼を言うのは私の方よ。社長…信長ちゃんのこと、よろしくね」
「わっ、私の方こそ宜しくお願いします」
ケイティに深々と頭を下げた私に信長は「そいつは親でもなんでもない」と言って呆れていたけど、私にとってケイティはもう家族同然で、しかも信長にとってとても大切な人で、そんなケイティから祝福されてとても嬉しかった。
「俺も驚きはしましたが、敬太郎さんと同じくお二人の事は嬉しく思います。社長、セナ、結婚おめでとうございます」
秀吉さんの顔色もやっと元に戻り、
「セナ良かったな。幸せにしてもらえよ」
と、頭をぽんぽんとしてくれ、それを見ていた信長からは、
「秀吉、クビになりたいのか」
「はっ?」
と訳の分からない嫉妬を向けられ、緊迫していた社長室はようやく笑いに包まれた。