第36章 休暇
「………どうしよう。嬉しすぎて、恥ずかしすぎて、心臓止まって死ぬかも……」
彼に見つめられる事すら耐えられなくて、両手で顔を覆った。
「セナ」
優しい声と共に、信長は私の手を顔から剥がそうとするけど…
「ちょっと待って…」
心を落ち着けなければ口から心臓が飛び出そうで…
「ふっ、待っても変わらん」
信長は笑って私の手を顔から剥がすと、私の額に口づけた。
「セナ」
「っ、私……嫌な子になってない?」
「はっ?」
「だって…だってこんな…幸せな事ばっか与えられすぎてて、これが当たり前になっちゃったら、人格変わっちゃわないかな?」
(現に、信長に別荘は持ってないのかって、当たり前のことのように聞いちゃったし…)
「貴様は少しわがままなくらいがちょうどいい。仕事においても、俺の相手としても優等生すぎるからな」
「それは、信長がすごいから頑張ろうって思えるからで…そんなに甘やかされたら、嫌な女になるかも…って言うか、本当にもうなってるかも……んっ!」
パチャンッと、水が跳ねて、体はプールサイドに寄せられ唇を奪われた。
「…どんな貴様でも、俺がいいと言っている」
「っ、」
「セナ、貴様はただ、俺の隣で幸せに笑っていればいい。俺はそんな貴様を愛してる」
「……っ、うぅっ…うゔっ」
今度は感動の涙が溢れ出した。
「忙しい奴だな」
「だって…」
本当に嬉しいから…
3週間前にも結婚するか?と聞かれたけど、あの時とは違って結婚と言う事に不安な気持ちは全くなくなっていて、今は幸せな気持ちばかりが湧いてくる。
結婚はタイミングだとよく聞くけど、そうなのかも知れない。
きっと、3週間前にはなかったものが離れていた間に宿り、今はこうする事が自然な流れのように思える。
「私も、信長と結婚したい。信長のことが好きだから、ずっと一緒にいたい」
プールの中の浮遊力を利用して、彼の身体に足も腕も巻き付けて抱きついた。