第36章 休暇
「貴様の気持ちは出会った時から知っている。その気持ちにまんまと絆され、今では俺の方が貴様に夢中だ」
クシャっと顔を崩して笑う信長は少し照れているように見える。
「っ、そんなこと…」
「ある」
あまりにもキッパリと言うから照れ臭くて…
「わっ、私の方がっ……っ!」
“絶対に信長のこと好きだよ”って言おうと思ったのに、信長の長い指が私の頬に優しく触れるから、言葉に詰まった。
「セナ、愛してる」
愛を囁く熱を帯びた彼に見惚れている間に熱い唇が重なった。
「……ん」
信長とのキスは、いつだってその時が一番最高のキスだと思ってきたけど、今この時のキスが、きっと今までで一番甘くて幸せなキスだと思った。
「……さすがに水の中は冷えるな」
甘くて長いキスから唇を離した信長は、私をプールサイドへ座らせ、彼も素早く水から上がった。
「このまま風呂に行くぞ」
「うん」
「風呂に入ってる間に、次はどの部屋にするかを決めておけ」
(うっ、もう次のお誘いが…)
「…じ、じゃあ、3番目に見た部屋…かな?」
「珍しく解答が早いな?なぜそこにした?」
「それは…あの、天蓋ベットだったから、映画で見るお姫様みたいになれるかなって…思って…」
映画で見る宮殿の一室みたいでとても素敵なお部屋だった。
「なるほど…やはり貴様は言うことがいちいち可愛い」
信長はふっと笑うと私を抱き上げた。
「では参るか、姫」
「えっ、なんでお殿様ことば!?」
「姫になりたいのだろう?貴様が姫なら俺は殿だろう?」
「えーー、なぜ和?ここはほら、ヨーロッパとかの王宮のイメージじゃない?」
「細かいことは気にするな。それに、俺と貴様には戦国時代が似合う」
「江戸時代じゃなくて戦国時代?」
「戦国大名と寵愛を受ける姫、これはこれで楽しめそうだな」
「っ、…もう、すぐそう言うこと言う」
ニヤリと口の端を上げて私を見る彼に、落ち着いていた鼓動はまたもや騒がしくなる。
でも、(戦国大名の信長もきっとカッコいいんだろうなぁ)なんて思いながら、ぎゅっと彼の首に抱きついた。
自分の目の前で光るダイヤの指輪を見つめながら、その身も心も彼のものになるのだと思い、幸せなどきどきに胸を躍らせた。